第10章 裁判と約束
柱合会議と竈門兄妹の裁判がある朝、2人はあまり寝ていないにも関わらず早くに目が覚めた。
あの任務の後、しのぶや義勇も2人が宿泊した宿の近くに滞在しているらしいが、なぜだかその柱2人がやけに険悪な雰囲気だったので、更紗はもちろん杏寿郎さえもどこに泊まるのかと聞くことを憚られてしまった。
だがどのみち本部で会うのだからと深く気にはしていなかったが、険悪な雰囲気と裁判が関係するとは2人は夢にも思っていない。
「睡眠時間が短かったが、更紗の体調はどうだ?力を使った影響はないのか?」
「全く影響ありませんよ。むしろ昨日の朝よりも体調がいいくらいです!蓄積されたものをたくさん発散出来たからかもしれません!」
柱2人の険悪な雰囲気とは正反対に、こちらの2人は朝から清々しく仲がいい。
「そうか!心配だったから安心した。辛くないならば少し早いが出発しよう。今は梅の花が見頃なので、それを眺めつつ向かうのはどうだろう?」
杏寿郎の提案に更紗は顔を綻ばせて大きく頷いた。
「それは素敵な道中になりそうですね!本物の梅の花を見た事がないので楽しみです」
満面の笑みの更紗に杏寿郎は微笑みながら手を差し伸べ、共に部屋を出て行く。
まさしく嵐の前の静けさと言った穏やかな朝の光景だ。