第9章 風柱と那田蜘蛛山
しのぶはもちろんそれを理解しているので強く止めることは出来ないが、先程まで血液不足で命の危機に陥っていた少女を状況の分からない外へ出す訳にはいかない。
「せめて更紗ちゃんを襲った人間くらいは捕らえている状況でなければ外に出せませんよ」
そう笑顔で強く断言され更紗はシュンと表情を暗くするが、ここにそんな表情を持ち直させる……しのぶや千寿郎にとっては頭を抱える原因が飛び込んできた。
廊下をバタバタと騒がしく走ってくる音が近付いてきて、3人がいる部屋の襖が勢いよく開かれた。
「千寿郎、胡蝶!鬼以外の全員を捕縛したと……更紗!!意識が戻ったのだな!よかった、これほどまでお前の力があってよかったと思ったことはないぞ……」
槇寿郎は更紗の前までゆっくり移動すると、跪いて自分の腕で将来娘となる少女の頭をフワッと包み込んだ。
「お義父さま……ご心配おかけして申し訳ございません。私はもう大丈夫です。あの……全員捕縛したと言うのは?」
「心配はかけてくれて構わないが、命が関わる心配はこちらの寿命が縮むから控えてくれ……ん?あぁ、杏寿郎が鎹鴉で全員捕縛したと知らせてくれた!少しでも危険が減ってよかったな!」
……全然良くない。
少なくともしのぶと千寿郎にとって今は全く良くない知らせだ。