第9章 風柱と那田蜘蛛山
「おい、俺らも行くぞ!……何震えてんだよ?」
更紗に敵意を剥き出しにしていた剣士でさえ、心配になるほど震える体を自身で抱きしめ、その震えを抑えようとするもなかなかおさまらない。
「その腕……見覚えあるのか?……知り合いか?」
更紗は1度深呼吸をして可能な限り気持ちを落ち着け、その腕が握っている日輪刀に触れる。
そこには頭から無理やり引き抜かれたような綺麗な黒髪が束で落ちていた。
「まだ……分かりません……まだ……間に合うかもしれない!」
独り言のような返事を残し、更紗は先程までの速度が嘘だったのではないかと思うほどの速さで実弥の後を追っていった。
「くそ!!なんなんだよ、あいつ!負けてられっか!」
残された剣士も破れそうな肺へ更に酸素を取り込み、その後に続いた。