第9章 風柱と那田蜘蛛山
つい先程まで少し離れた場所で少女と話していた実弥が、いつの間にか更紗の目の前に移動してきていた。
剣士を見る実弥の怒気の含んだ目は有無を言わさぬ圧がかかっており、剣士は頷くしか出来ないでいた。
「お前も文句ないよなァ?」
実弥に問われるも、更紗には拒否する気はない。
「ありません。さね……不死川様の判断に従います」
危うく名前で呼びそうになるが、どうにか踏み止まる。
ここで名前で呼んでしまえば更なる誤解を招きかねない。
「じゃあ、行くぞォ。案内させるが、途中からは俺らだけで向かう。分かってるだろォが着いてこれねェ奴は置いていく、これに例外はない」
「「はい!」」
こうして実弥の予定から1人加わり、鬼の元へ急いだ。
案内をしてくれていた少女剣士と別れると、実弥は一気に速度を上げ目的地へ駆けていく。
杏寿郎の速度に慣れているとはいえ、やはり更紗にとってはかなりの速度でついて行くのが精一杯だ。
だが隣りを走る剣士は、更紗よりも余裕がないように思える。
息は乱れ更紗からも僅かにだが遅れつつあるのだ。