第9章 風柱と那田蜘蛛山
「何か……間違えましたか?」
小さな声で全員に問うも、家の者は分からないようで更紗と共に首を傾げているが、杏寿郎と実弥は苦笑いだ。
「更紗、気持ちは分からんでもないがそこまでしなくていい。不死川も用があって来たはずだ。荷物も多いように思えるから、何か届けるものがあるのだろう」
杏寿郎は屈んで更紗の手を取り立ち上がらせてやり、実弥の横に置かれた大きめの袋を見るように促す。
確かにそこには任務に今から向かうにしては大きめの袋があった。
「とりあえず入れよ。そこに突っ立ったままだと色々気ィつかわせんだろ」
それは家の者の事を言っているのだろう。
実弥の言う通りこのまま廊下に立っていたら、いつまで経っても家の者はここから立ちされない。
「き、気付かず申し訳ございませんでした!ご案内ありがとうございます。こちらのお部屋、少しお借りしますね」
家の者の前に両膝を着いて更紗が言葉をかけると、穏やかな笑みを浮かべ頭を下げる。
「とんでもございません、お部屋はお気になさらずお使いください。私はこれにて失礼させていただきます」
そう言ってもう一度更紗に笑顔を向けて、家の者は廊下を歩いてこの場をあとにした。