第8章 お引越しとお宅訪問
2人が後頭部をさすりつつ困惑気味に天元に顔を向けると、手刀を繰り出した手をヒラヒラ振りながら楽しそうに笑っている顔が見えた。
「いいって!お前ら雑魚鬼も相手したんだろ?もう派手に休め。明日、朝餉だけは食ってけよ!嫁達も気合い入れて作るって派手に言ってたからな!」
更紗と杏寿郎は顔を見合せ笑顔になると、天元の温かな申し出を有難く受け取る事にした。
「お言葉に甘えさせていただく」
その返事を聞くと、天元は笑顔を残し踵を返して自分の部屋へ続く廊下を歩いていくも、ふと立ち止まり2人に顔を僅かに向け視線を送る。
「あ、部屋に換えの浴衣と湯を張った桶置いてっから、好きに使ってくれ!俺は寝る、礼はいらん、派手に俺を崇め奉っておけ!じゃあな!」
どこまでも気の利く天元は今度こそ家の奥へと姿を消していった。
その姿を見送り、2人は草履を脱いであてがわれた部屋へと歩を進める、
「ところで更紗、力を思い切り使っていたが体は大丈夫なのか?」
更紗はその僅かに怒気を含んだ声に身を縮こませ小さく頷く。
「それならいいが、帰ったら仕置だな!」
「はい……申し訳ございません」
こうして長くも短い1日が終わった。