第8章 お引越しとお宅訪問
あれから2日経ち煉獄家へ帰ってきてからというもの、家の外で起きた事とはいえ更紗が攫われてしまった事に責任を感じ、槇寿郎は家周りの掃き掃除を自ら行っていた。
今日も今日とて、せっせと掃き掃除をするものだから更紗は落ち着かない。
「杏寿郎さ……杏寿郎君、本当によろしいのでしょうか?お義父さまに掃き掃除をお願いしたままで……」
杏寿郎は離への引越しの為、荷物の整理をしている手を止めて困ったような笑顔で父がいるであろう塀の方向を見る。
「知っているか?俺も昨日偶然聞こえたのだが、父上は掃き掃除をしながら鼻歌を歌っている。楽しんでおられるから、今はこのままで良いだろう」
「鼻歌……あ!杏寿郎君、見てください。箒が塀から見え隠れしています」
もちろん杏寿郎にも見えている。
父親が箒を使って素振りしているであろう箒の動きが。
「うむ!間違いなく楽しんでおられる!そっと温かく見守ろう!ところで、更紗の荷物はこれだけで間違いないか?」
ここに父を温かく見守り隊が結成され、槇寿郎は知らない間に2人から微笑ましく見守られる事となった。
更紗は自分の荷物を確認する。
と言っても両手に収まる箱1つでも余裕がある程しか荷物がないので、確認もほぼ必要ないくらいだ、