第7章 不穏な影と全貌
杏寿郎の真剣な表情と言葉、微かに震えている手を前に更紗は頷くしか出来なかった。
すると杏寿郎は笑顔になり、すかさず更紗を抱き抱えようと腕を伸ばすも、身を引かれ腕は空を切ってしまう。
「遠慮する必要はない!痛むのならば無理は禁物だ!」
と詰め寄るも、今度は更紗に勢いよく首を左右にブンブン振られ再び拒否されてしまった。
「ここからだと人目が……街の外までくらいならば問題ありませんので、そこからお願いしてもよろしいですか?」
何度か人が多く行き交う中を抱きかかえてもらった時、更紗は周りの人の生暖かい視線にいたたまれない気持ちになっていたのだ。
歩く速度は遅くなるが歩けない程の痛みではないので、自分で歩く選択をした。
「そうか!俺は気にならんが、更紗が気になるならばそうしよう!だが、悪化しそうならば有無を言わさず抱えあげるから、そのつもりでいてくれ」
更紗は悪化しない事を祈りながら、杏寿郎と共に宿を出て煉獄家を目指した。