第24章 凄惨と合流
手渡された治療薬を受け取った剣士は慎重に頷き、未だに呆然としている剣士たちを促しこの場を離れようとする背中に声を掛けた。
「あの!今まで通りの言葉遣いでいてください!あと、お名前を教えてください!」
柱のくせに柱らしからぬ要望に驚き目を見開いて振り返った剣士は、瞳に涙を滲ませる自分より年下と思われる少女の柱に初めて笑顔を向けた。
「桐島樹(いつき)」
忘れるはずもない……大好きで守りたくて助けたくて……それでも失ってしまった人と同じ苗字。
更紗が強くなりたいと願うようになったきっかけの人と同じ名を持つ剣士が目の前にいる。
「桐島って……棗姉ちゃんと同じ……」
「うん……棗は遠縁の従妹。帰ったら聞かせてくれ、棗との思い出」
そう言って樹は笑顔を残し、更紗の返事を聞く前に他の剣士たちとこの場を去るために走り出した。
「ごめんなさい!棗姉ちゃんを守れなくて!必ず……お話しします!全てお話しするので……絶対に死なないで!」
もう振り返ることはなかったが、その代わりに樹は片手をヒラヒラと振って返事を返してきた。
どこからか更紗と棗の関係を知ったのかは分からない。
杏寿郎や実弥や圭太が軽々しく更紗の生い立ちに関わることを話すとは思えないからだ。