第23章 上弦と力
それを見届けている間も首筋へと何本も造血薬を突き刺し、体の中へ流し込んでは血液を造らせる。
(力を使うのと実際に血を流すのは……やっぱり無くなる速度が全然違います。体の形さえ整えば……通常の治癒で回復出来るはず。私の体、頑張って!持ち堪えて!)
もう周りの音も聞こえない。
ただ玄弥を回復させること、そしてそれまで自分の体を持ち堪えさせることで頭がいっぱいで、今周りで何が起こっているかなど把握出来る状態にない。
(体がふらふらします……でも……あと少しで玄弥さんは完全に再生する。あぁ……情けないですが……どなたかに体を支えていただきたいな)
極度の貧血からか猛烈な眠気が更紗を襲う。
それでも意識を飛ばすことは許されないと、首筋に注射器を突き立てては眠気を追い払うが、そろそろ限界が近い。
(眠いです……あ、玄弥さんの体……元に戻りました。そろそろ血を止めないと)
そう思い血を止めるために腕を圧迫しようとした瞬間、自分の手ではない何かが代わりにそれをやってくれた。
「判断は任せると言ったが、これはやり過ぎだ!何をしている?!君が死んでしまうぞ!」
明らかに怒りが込められた声音だが、更紗にとっては何よりも心穏やかになれる声が耳元で聞こえた。