第23章 上弦と力
「あぁ、そうだな。息子たちが命を懸けて鬼と闘っているのだ、俺も任された事を何があろうと成し遂げる。でなければ、あの子たちが帰ってきた時に顔向け出来んからな」
少し寂しげに瞳を揺らしながら、槇寿郎はここに来るまでの出来事を頭の中で巡らせた。
煉獄家の居間で千寿郎と茶を飲んでいると、突然杏寿郎の鎹鴉である要が慌てた様子で姿を現した。
その要から槇寿郎に宛てた言伝で決戦が今夜開始されると知り急いで準備を整えていると、今度は神久夜が慌てて煉獄家へと飛び込んで来たのだ。
杏寿郎の開戦の情報にも驚いたが、神久夜からもたらされた情報が何より槇寿郎や千寿郎の肝を冷やし、頭を抱えたことは2人だけしか知らないことである。
「あの子は……更紗は耀哉様たちを助けてくれたのだが、杏寿郎を連れず1人で向かったと神久夜から聞いた時は心臓が止まるかと思った」
「あ?姫さん1人で行こうとしてたのか?!……煉獄の旦那には悪ぃが、それ知らなくて良かったって心から思うわ。俺が姫さんと会った時はすでに煉獄と一緒にいたから、初めから2人で動いてると思ってたが……煉獄が後を追って追い付いただけだったんだな」
珍しく揉めていた原因は、あの場で初めてお館様を救出する手立てを2人で考えていたからだったのだと分かると、天元も納得がいくというものだ。