第23章 上弦と力
剣士が2人増えた事など意に介していない鬼へ、杏寿郎が技を放ちながら距離を詰める姿を視界の端に映しつつ、更紗はしのぶとカナヲへ駆け寄っていった。
「しのぶさん、カナヲさん!すぐに治します!楽な姿勢をとってください!」
突然現れた更紗と杏寿郎に2人は目を丸くしているが、思いもしなかった助っ人に胸をなで下ろしているように見える。
「更紗ちゃん!師範を先に治して!あの鬼の血鬼術で肺の細胞が壊死して、体も深く切られてるの!お願い!」
「分かりました。必ず助けますのでご安心を」
どうにか両足で体を支えているがしのぶは既に満身創痍で、意識を保っていることすら奇跡なほどの出血量である。
更紗はしのぶの肩を支えてゆっくりと通路へ腰を落ち着けさせてやり、少しでも安心させるように笑顔を向けて日輪刀を抜き出した。
「すぐに良くなります。そのまま楽にしていてください」
「こんなところで……血を……」
使ってはいけない。
そう続けたかったのだろうが、細胞が壊死している上に血が溜まっている肺の痛みに言葉は続かなかった。
「お気になさらず、造血薬は数え切れないほど持参しておりますので」