第21章 秘密と葛藤
「守ってもらうのは嬉しいですし心地よいです。でも自分にも闘う力があるならば、大切な人1人に危険を侵させるのではなく、そばでその危険を払いたいって思います。私、杏寿郎君やお2人に、危険だから闘いに加わるなって言われたら……と思うと涙が」
誰も言っていないし思ってもいないことだが、もし言われたらと思うと更紗の胸がキリキリと痛み、我慢しようとしても涙がじわりと瞳に浮かび上がってきた。
「想像して泣かなくていい。君は感受性が強いのだから、変な方向へ考えを巡らせて深みにはまってはいけない。自分で自分を苦しめないでくれ」
背を優しく撫でてもらい、どうにか更紗は深呼吸をして涙が流れるのを防いだ。
「すみません……玄弥さんも同じなのかなって思うとつい……今は上手くお2人の気持ちが噛み合っていないですが、鬼がいなくなれば万事解決です!そうと決まれば私もやる気を見せなくてはいけません!お薬の研究に鍛錬に忙しくなります!」
今にも立ち上がってことを起こそうとする更紗を落ち着かせ、席に座った状態で3人が更紗を静かに窘めたことは言うまでもない。
まだまだ更紗が慎重になれる日は遠いようだ。