第20章 柱稽古とお館様
「あぁ……なんとなく分かるわ。姫さんの育ってきた環境が影響してんのかねぇ、自分のことに関心薄いの」
前に更紗が攫われた時に見た、今は亡き当主やその後に聞かせてもらった当時の日常が頭の中へと甦り、天元は眉間に皺を寄せて不快感をあらわにした。
そんな雰囲気を感じ取った行冥は既に目に涙を浮かべながら手を合わせ出す。
「月神の生活環境はそれほどまでに過酷なものだったのか?」
「過酷……だったな。今はなくなったようだが、煉獄家に来た当初はたまに悪夢として夢を見ていたと言っていた」
シンと部屋が静まり返り本人がいないところで空気が重くなるが、その本人が帰ってくる前にこの空気を打破しようと杏寿郎が言葉を続けた。
「だが今は幸せだと言ってくれている。過去も未来もあの子なりに受け止めたうえで笑っているので、先はどうなるか分からんが見守ってやって……」
「ただいま戻りました!お薬に在庫があるみたいなので、よろしければお持ち帰りください!」
良いのか悪いのかはさて置き、話題の中心だったご本人が元気に満面の笑顔で戻ってきた。
この後、わけも分からないまま更紗は杏寿郎や蜜璃、天元に愛でられ更に笑顔になったとか。
気を取り直して会議が続き、昼も過ぎる頃に全ての案件が終わった。
残るは実弥から話を聞くだけとなる。