第20章 柱稽古とお館様
実弥も微笑み頷き返してきてくれたところで、経過報告は終了となった。
あとは作戦会議を残すのみとなったのだが、ここでお館様の体力が限界を迎えてしまった。
「皆、すまない。そろそろ私は退室させてもらうよ。また、皆で会える日を楽しみにしている」
そんな日がくるのか……と、皆の中に不安や悲しみが生まれる。
だがそれは1番お館様が感じているだろう。
自分の体のことは自分が1番理解している……それでも皆に心配をかけまいと笑顔を向けてくれているのだ。
柱たちが不安を顔に出すわけにはいかない。
『お館様、どうかお身体ご自愛下さい』
計らずしも全員の声がピタリと寸分違わず合わさった。
性格も歳も全てがバラバラな柱の声が揃い、本人たちが驚き顔を見合わせている。
「息もピッタリだね。君たちになら何の心配もせず任せられる。どうか後輩たちを導いてやってくれ」
そう言ってお館様は部屋を出ていくが、何か思い出したように振り返り更紗を見つめ手招きをした。
何かしてしまっただろうかと記憶をさかのぼらせながら呼ばれた方へ早足で歩み寄り、痛々しいお館様の顔を見上げる。
「どうかなさいましたか?早くお休みにならないと……」