第20章 柱稽古とお館様
よく寝たはずなのに更紗は身も心も重い。
剣士たちを前にしてもそれが晴れる気配は全くなく、むしろ更に重くなる一方だった。
「実弥さん、師範。明らかに皆さんの木刀が私に向いているように見えるのですが……気のせいではありませんよね?」
今日から更紗を柱側として稽古に参加させると実弥が剣士たちへ説明すると、意外にもすんなり受け入れられホッとしたのも束の間……柱稽古のはずなのに、ほぼ全員が柱でない更紗を打ちのめそうと木刀を向けている。
「そりゃあ1番倒せそうな奴を先にやろうって普通思うだろうからなァ。お前にとっていい経験になんだ、甘んじて受けてやれェ」
「簡単に倒されてはいかんぞ!俺たちも端から打ちのめしていくので、せめて俺たちが君の元へ到達するまで持ちこたえろ!」
無茶苦茶だ。
ただでさえ目の前の剣士たちはいくつかの柱稽古を乗り越えてこの場にいる。
鬼殺隊に入隊したばかりの剣士でなく、ある程度の強さをもっている剣士多数を相手など怖くて仕方ないが、怖いからと言って下がるなど目の前の2人が許してくれるはずもない。
「出来るかは分かりませんが……善処致します」
更紗の心の準備が出来たところで、剣士たちを真ん中にして3人は距離を取り身体的な準備を整える。
3人の顔に鮮やかな痣が発現したと同時に、この場の全員が動き出した。