第4章 鍛錬と最終選別
目の焦点が合っていない更紗を見て、杏寿郎は一時中断を言い渡す。
「四半刻ほど休憩だ」
鬼師範の時の杏寿郎は本当に厳しい。
その厳しい声が呆れられてるように感じて更紗は焦った。
「師範、まだ大丈夫です!私、まだやれます」
「姫さん、煉獄は」
天元の言葉を杏寿郎が片手を上げて制する。
そうして立ち尽くす更紗の前にやって来て見下ろす形で告げた。
「今の君に続きは無理だ。育手は弟子の体調管理もしっかり行わなくてはならない。これは育手としての命令だ、従いなさい」
有無を言わせぬ物言いに何も言い返せず、歯を食いしばって師範を見上げる。
「かしこまりました……少し顔を洗ってきます」
今の更紗にはそう答えるのが精一杯で、気持ちを落ち着かせる為に道場を出て井戸へと向かう。
(悔しい、悔しい!すっごく悔しくて仕方ありません!)
井戸へ辿り着き、水をくみ上げて頭にバシャッとかける。
道着も襟元だけ少し濡れたが、これくらいなら問題ないだろう。
「あぁーもう!!どうして上手く出来ないの?!教えて頂いてるのに、自分だけ息切れして情けないです!」
ひとしきり更紗らしくない言葉遣いで叫ぶと、少しスッキリしたようで、手拭いでズブ濡れになった頭を拭き、気合いを入れ直した。