第20章 柱稽古とお館様
恥ずかしさを押し込めて見つめ返してくる更紗の額に自分の額を軽く当て、唇に触れていた手で頬を撫でる。
「それを不意打ちだと言うんだぞ。だが……全てが片付き落ち着いたら確認してくれ。大歓迎だ」
「不意打ちではなく本音を言っただけですが、今日は先に杏寿郎君が不意打ちをしたのでおあいこです。フフッ、大歓迎してくださるなら早く落ち着けなくてはいけませんね」
そう言って更紗は顔を少し上げ、杏寿郎の唇に軽く口付けをして頬を赤らめたままニコリと笑う。
「今のは不意打ちに入りますか?……さぁ、実弥さんのお屋敷へ急ぎましょう!時間は待ってくれませんからね」
意識的にした行為による杏寿郎の反応を見たかったが、これ以上は更紗が直視出来ず杏寿郎の手を引っ張って、先で待つ神久夜の後を追った。
「これこそ反則だろう。まったく……君には敵わない」
見られる心配はなさそうだが、万が一更紗が振り向いた時に自分の赤くなった顔を見てしまわないよう、繋がれていない方の手で顔の下半分を隠す。
2人の顔の赤さと心臓の動きが落ち着くまで、暫く無言のまま時を過ごし実弥の屋敷へと歩を進めた。