第19章 音柱と美しき鬼
「そうだな、俺からも不死川と伊黒には連絡を入れておく。あと胡蝶にも連絡せねば…… 更紗」
更紗の返事を聞く前に握っていた手を自分の方へゆっくり引き寄せ、大きく重いものを背負う背に腕を回した。
「間違いなく更紗が頑張った分だけ多くの命が救われる。俺に人を癒す力はないが、代わりに誰よりも鍛錬に励み強くなって人を救う。共に頑張ろう」
「はい。こうして共に闘えること、心から嬉しく思います。杏寿郎君の背中にはまだ追いつけませんが……少しでも近付けるよう稽古に励みます」
更紗も、柱として自分より大きく重いものを背負う杏寿郎の広い背中へ腕を回して浴衣を握り締め大きく息を吸う。
「杏寿郎君の匂い、すごく落ち着きます。元気いっぱいになりました。朝餉を一緒に作ったら私も杏寿郎君に負けないくらい稽古に精を出して追いつきます。でも、待っていなくて大丈夫です。それでも必ず追いついてみせますので」
顔を上げてニコリと目を細めて笑う更紗に釣られ、杏寿郎も笑顔を返した。
「今の更紗相手に待つつもりはないぞ?先で追いついてくれるのを楽しみにしているからな!さぁ、そろそろ朝餉の準備をして互いの成すべきことを成さなくては」
無事に許可を得られ、目標を改めて定めることの出来た更紗は杏寿郎と共に凄まじい速度で朝餉の準備を行い、笑顔で次の稽古場へと向かっていった。