第17章 歪みと嘘
地面にへたり込む更紗が禰豆子や炭治郎たちの方へ視線を送ると、杏寿郎もつられてそちらへ視線を移し目を見張った。
「あれは……禰豆子少女なのか?人間に戻ったのか?!」
数分前ならまだしも今は朝日が降り注いでいる。
刀鍛冶の里が奇襲されたことはもちろんだが、陽の下を鬼が歩くなどそれと同じくらい異常事態だ。
「俺たちもよく分からないですが、人間には戻ってはないと思います。目も牙も鬼のままで言葉も片言だし……」
「無事なのは喜ばしい事だが……何が起こって……時透!君も何やら雰囲気が変わったように思うが気のせいか?」
さすが人の機微に敏感な杏寿郎、無一郎の一人称や言葉遣いが変わったことに瞬時に気が付いた。
「記憶が戻ったんです。炭治郎や更紗ちゃんの瞳の色や言葉が父親と似ていて、それが呼び水になったみたい。それで……これからも同じ柱として一緒に頑張りたいです」
かつて無一郎が柱となった時、柱として共に頑張ろうと杏寿郎に言われたことがあった。
その時の無一郎はただ呆然とその言葉を聞いていたが、こうして記憶が戻り本来の姿になった今、心からそう思い杏寿郎に伝えたかったのだ。
「そうだったのか!もちろん、これからも柱として共に頑張ろう!出来るならば、ここでこっそり足を治している更紗とも仲良くしてやってくれ!」