第4章 鍛錬と最終選別
杏寿郎ほどではないが、明らかに千寿郎より体格がよく殴られてしまえば吹き飛ぶことは簡単に予想できる。
だが、千寿郎も煉獄家の次男として引くわけにはいかない。
「私の姉上になにか御用でしょうか?」
一人称を変えるほど、真剣に相手に向き合っている。
更紗は千寿郎の袖を掴み見守るしかできず奥歯をかみ締めた。
どんなに悔しくても、近接術を嗜んでいない自分は役に立たないと理解している。
「おお、カッコイイ弟くんだね。別に取って食おうなんて思ってないよ?ただ一緒にご飯でもどうかなって誘ってるだけ、なぁ?」
後ろにいる男に同意を求めると、後ろの男も同意した。
「それでしたら先約がございますので、お帰りください。残念ながら姉上も私もあなた方にかける時間は御座いませんので」
「いやいや、ちょっとくらい時間あるでしょ?ほんの半刻で終わるからさ」
つまり更紗にいかがわしい事をしようとしている訳だ。
尚更引くわけにはいかず、震える足を叱責し踏ん張る。
「時間なんてございません、お帰りください」
「ちょっとくらい耳を貸してよ」
「お帰りください」
「このガキ!調子に乗りやがって」
痺れを切らした男が拳を振り上げ、千寿郎を殴り飛ばそうとした時、千寿郎は歯を食いしばり、更紗は咄嗟に千寿郎に覆いかぶさった。