第15章 箱庭に流れる音色
「……あー……、治っちゃいました。どういうことでしょうか?杏寿郎君」
どういうことかは杏寿郎が聞きたいだろう。
だがこの中で1番混乱しているのは天元だ、文献内にあったので血を使えばより強力な治癒を施せると話では知っていたが、まさかここまでのものとは思っていなかった…… 更紗も杏寿郎もだが。
「何が起こった?地味な痛みが無くなったかと思えば派手な疑問が出てきたんだが……」
「いや、俺にも分からん。だが、更紗の祖先が村ぐるみで力の漏洩を阻止してきた理由がはっきりした。これは確かに外に知られるわけにはいかん力だ……文献にあった通り、使用者の…… 更紗の人権や命が脅かされるぞ」
2人が元に戻った左手を見て身震いする中、当の本人である更紗はあっけらかんとしており、むしろ左手が戻ったことに胸をなで下ろしている。
「つまり今まで通り秘匿にしていれば問題ないということですね!出来ることが増えて嬉しい限りです!天元君も柱として残れますし」
「あ"ー悪ぃ姫さん。左手があろうがなかろうが上弦の鬼を倒したら終いにするつもりだったんだわ」
「え?そうなのですか?」
この日、113年間欠けることのなかった上弦の鬼の討伐。
更紗の鬼にも人にも多大な影響をもたらす力の発現。
大きな2つの出来事を巻き起こして長い一日は幕を閉じた。