第15章 箱庭に流れる音色
「む?そうだったのか?更紗は何も出来なかったと言っていたが」
「ぁん?んなわけねぇだろ……姫さんが俺の代わりにクソ鬼の鎌を受けてくれてなかったら、もっと状況は悪くなってた。戦闘開始直後にクソ鬼の鎌や血鬼術に毒があるって教えてくれたから、これだけの被害ですんでんの!柱2人で育て上げた姫さんの力舐めんなよ」
決して舐めているわけではないが、あまりにも自分は無力だったと訴えられていたので、思うさま動けなかったのだと思い込んでいただけだ。
「そうか!毒に関しては肝を冷やしたが、しっかり勤めを果たしていたのだな!君は自分の力を過小評価し過ぎだ、出来なかったことを克服するのも大切だが、出来たことを誇り更に高みへもたらすことも大切だぞ!」
「そうそう!っと、聞きたいことはまだあるが、先に左手の傷塞いでくんない?地味に痛てぇんだわ……」
2人の会話についていけず、ただただ杏寿郎と天元の顔を交互に見やっていた更紗だったが、天元の痛々しい傷を目にして慌てて意識を手繰り寄せそっと手を当てた。
「遅くなり申し訳ございません!すぐに塞ぎます!」
一刻も早く治したいと言う気持ちからか、それとも手に傷を負っていたからか……どちらかは誰にも分からないが、手から溢れ出た白銀の粒子は一瞬にして炎のような赤に染まった。