第15章 箱庭に流れる音色
炭治郎の声をかき消した3人は、再び妹鬼の間合いに入り頸に刃を突き立てていた。
天元たちが引き付けてくれているので兄鬼の介入はなかったが、今度は妹鬼の頸が帯へと変化して刃先を迷わせた。
「んだよこれ!柔らかすぎて斬れねぇぞ!」
「弛んで刃が通らない……」
2人の言葉に更紗も奥歯を噛み締め眉をひそませるが、日輪刀を握り直してありったけの力で刃を振り切る。
「3方向からなら斬れます!諦めないで!刀を振り切ってください!」
更紗が足元の瓦へ足がめり込むほど踏ん張り、腕が押し負けて折れるのではと思うほどの力で帯へ日輪刀を振り切っている姿を目にして、2人もそれぞれ別方向へありったけの力で振り切った。
すると少しずつだが帯に切れ目が入っていく。
それを目にした更紗は紫炎の壱ノ型をその場で繰り出し、刃に威力と速度を付与させて帯の切れ目を一気に進ませた。
そうして3人の力が合わさって僅かに繋がっていた帯となっていた頸は斬れて妹鬼の頭が宙を舞い、それを落とすまいと伊之助が全力で追いかけて見事腕の中におさめ走り出した。
「これは俺が持って逃げ回る!お前らはオッサンの加勢に行け!」
その声を追い掛けるように家屋が壊れる音と、天元の大声が伊之助に向けられた。
「避けろー!」
その声と共に更紗は伊之助へ向かって走り出した。