第70章 本当に最強?
外では梅の花も散り、桜の蕾が目立つようになった。
そのうち桜吹雪になるんだろうなぁ、と一人ほっこりと…
いや一人じゃねえわ。
だいぶ具合が回復したので久しぶりに散歩に行こうと外に出たのだ。歩いたほうがいいとは言われてたからな。
散歩よりも家の中のことしないといけないっていうのはわかっているんだけど、ひとまず気晴らしにと外に出た。
そこで偶然にも学校帰りの無一郎くんと公園で遭遇したのだ。
何も言っていないのに私が座るベンチに腰を下ろし、学校のことなんかを聞かせてくれた。
楽しいし別にいいか。
「そういえば不死川先生、今学校で『パパ』って呼ばれてるんですよ。」
「え、そうなの?」
「高等部の霞守様に聞きました。あの人、最近ちゃんと学校に来てるんですよね。お腹の子が産まれたら顔面パイみたいに、将棋の盤を投げてお祝いしようって話してたんですよ。」
「…それは怪我しちゃうから、やめようね。」
いや怖すぎだろ。
なんで急に将棋の盤投げられるんだ。あんなのただの木の塊だぞ。
「え?みんなで投げる練習してるのに?」
「やめて!!お祝いの次の日がお葬式になっちゃう!!」
「冗談です」
……この子の感情も読みにくいな。ま、まさか本気だとは思わないけど…。
「赤ちゃんって本当に動くんですか?」
「うん、動くよ。」
「音もきこえるって聞いたんですけど本当ですか?」
「ああ、うん。私は聞いたことないけどするらしい…」
「へえ」
無一郎くんは私のお腹に耳を当てた。その行動にちょっと驚いたけど別に問題があるわけでもないので何も言わなかった。
ちょうどのその時、お腹の子が動いたものだからびっくりしていた。
「動いた!聞こえた!」
「本当だねー」
その反応が微笑ましくて、可愛くて私も思わずにっこり。
「……なあ、お前…いい加減にしろよ…」
「あ、兄さん」
そこに右手にビニール袋を持った有一郎くんが呆れ顔でやってきた。
公園は二人の通学路の途中にあり、よく休憩のために立ち寄るらしい。そこに偶然通りかかった私を無一郎くんが見つけて声をかけたということだ。
最初は三人で話したりしていたのだが、有一郎くんが近くのコンビニで買い物をしてくるというので二人で待っていたのだ。