第32章 ー夢で話そうー
自分なんてどうでもいい。
みんなが幸せになるならば、私の命なんてそれに釣り合わないほどのものだ。
『待ってくれ』
『…』
『きっともう最後だろうから、一つだけ聞かせてくれ。お前は幸せだったのか?』
……。
幸せ?
それはいらないものだ。私には無縁のものだ。
どうでもいい。
もうどうでもいいんだ。
だから放っておいてくれ。
『お前の幸せはどこにあったんだ?』
私は振り返った。
『________』
確かに答えたが、その時通った電車のせいで私の声はかき消されてしまった。
あったよ。
幸せは、確かにあったよ。
『待て、聞こえなかったんだ、もう一度』
また後ろから声が聞こえてくる。
私たちを隔てる踏切が上がる。
すぐそこにいるのに、まるで見えない壁があるみたいだった。私たちはそれ以上近づかなかった。