第4章 ギフト
「あああ、あの!私、未だお昼食べてなくて!だから、その、えーと・・・」
顔を真っ赤にしてあわあわと言い募る名前を前にした杏寿郎は、自然と空気が和らぐのを感じた。
少し前までは泣いていたとは思えない位に、名前は表情をコロコロと変える。
それを見た杏寿郎は自然と微笑んでいた。
「そうか、俺も腹が空いたな!」
「え、煉獄さんも?」
杏寿郎はキョトンとする名前の頭にポンと手を乗せると、一つ頷いた。
「うむ!街へ何か食べに行くとしよう!」
「い、今からですか?」
「前に君と約束しただろう?今度一緒に甘味でも食べに行こうと」
「・・・そういえば」
「よし、俺は胡蝶に許可を取ってくる!君はその間に支度をすると良い!」
善は急げとばかりに杏寿郎はしのぶの元へ向かった。
常日頃から鬼殺隊の柱として殺伐とした日々を送る中で、名前と過ごす何でもない一時。
手土産を渡せばパッと華が咲いた様に喜び、任務中にあった他愛ない事柄も彼女からしてみたら驚く事ばかりな様で、毎回真剣に耳を傾けてくる。
いつの間にかこの穏やかな時間が、杏寿郎の密かな楽しみとなっていた。