第3章 鬼殺隊と鬼
私がこの蝶屋敷で目覚めてから、早くも一月が過ぎようとしている。
怪我の状態は良好で発熱する事も無くなった。
まだ左腕が固定されたままだけど、肋骨は殆ど治ったし肩の傷も塞がってきている。
だけど、相変わらず自分の事は殆ど思い出せていない・・・。
大正四年。
信じられない事に此処は、令和の時代から百年以上を遡った過去の世界みたいだ。
道理で色々と話の噛み合わない部分があったというか何というか。
お陰で周囲の人達からは記憶喪失が自分自身の事だけでなく、日常生活にまで及んでいると思われている。
何となくこの事は誰にも伝えていない。
此処の人達は皆親切で優しいから、黙っているのは少し心苦しいけど。