第36章 任務同行
「…ん………。」
寝起きに目覚まし時計を探す癖は無くなっており、代わりに杏寿郎にくっついて体を温めてから布団を出る習慣が出来ていた。
桜は普段の杏寿郎からは想像しにくい静かな寝息を聞きながら温まった拳をぎゅっと握る。
(…ほとんど寝れてないけど千寿郎くんが起こしにくる前に起きれた…今日は朝も鍛錬できる。次に要くんが指令を持ってきたら私も杏寿郎さんに付いていくんだもの…頑張らなきゃ…!)
そう気合いを入れると桜は杏寿郎の髪に優しく触れてから布団を出た。
―――
一方、ユキは桜が鍛錬を始めた事に気が付き 一ノ瀬家で思わず鼻に皺を寄せた。
ユ(せっかく治ったというのにまた筋肉痛とやらになるのか。あの様な事をしなくとも十分動けるだろうに…。借り物の体は上手く扱えないものなのだろうか。)
ユキはお館様の屋敷で隣室にいる自身の気配を桜が感じ取れなかった事を思い返し 心配そうに尻尾を揺らした。
ユ(………それにしても槇寿郎はいつになったら来てくれるのだ。)