第30章 弟と姉の絆
茂「…っ!?…壱ノ型―水面斬り!!」
慌てて技を放つと鬼に当たった木刀は岩になることなく折れ、先は弧を描いて遠くへ跳ね飛んだ。
茂「隆史!!解けてるッ!!!」
隆「分かってる!岩の呼吸、弐ノ型――霞石響岩ッ!!」
体格に恵まれた隆史の全力を乗せた斬撃が蹲り続ける無抵抗の鬼の首に当たる。
そして、呆気なく首と胴体は分かれた。
隆「………は…、」
茂「…………何で…、」
戸惑う二人の目の前に転がってきた顔は眉尻が下がってあどけなさを増しており、目からは大粒の涙が流れていた。
弘「ごめ、なさ……あ、姉上、ごめんなさ、い………姉上、姉上……、」
鬼が悲痛な声色で最期の言葉を遺して消えるのを確認すると 二人とも眉を寄せて杏寿郎を振り返る。
杏寿郎もまた眉を寄せて複雑そうな顔をしていた。
杏「このような鬼は初めて見た。それでもやはり…鬼である以上は人を喰う事をやめられないのだな。それが愛する姉であろうとも。」
隆「後味悪すぎだろ…。早く帰りましょう。水琴さん返して褒めて貰わないとやってらんないです。」
茂「……今回はこいつに賛成です。早く帰りましょう。」
杏「……ああ。」
杏寿郎は短く答え、鬼の消えた場所に落ちていた簪を拾うと元に戻った日輪刀を鞘へ納めた。
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