第22章 祝福
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一方、千寿郎は杏寿郎が畏まった服を着て槇寿郎の部屋へ急ぐ様子を見かけてから人知れず緊張して自室で正座をしていた。
千(今日の流れを見るに…、桜さんもいないし、きっと結婚のお許しを得に……。)
千寿郎は喉をこくりと鳴らしてぎゅっと拳を握る。
昔から慕っていた兄は、自身の幸せよりも責務に突き動かされるように生きていた。
千(あの兄上が鬼殺とご飯以外に初めて見せた執着なんだ、上手くいってほしい…。でも父上はどうされるだろう。兄上が誰と一緒になるか興味も持たなければ二人は結ばれるけど…、でも………、)
千寿郎は普段より眉尻を下げて目を瞑る。
千(でも、しっかりとお許しを出して欲しい…。柱になった時みたいに突き放さないで欲しい……。)
そしてぎゅっと目を瞑ったまま、祈るように俯いた。
その時―――、
杏「千寿郎ーーッッ!!!!!」
千寿郎は遠くから自身を呼ぶ声にハッと顔を上げる。
千「あ、兄上っ!?」
千寿郎は慌てて自室を出ると、長い廊下の向こうにまたもや桜を抱きかかえた杏寿郎の姿を見つけた。
その表情を見れば分かる。
千(ただ結婚が決まったわけじゃない…父上は許してくれたんだ……。いや………、)
千寿郎は先程とは違って杏寿郎の中で嬉しそうに泣いている桜を見ると自身の頬にも温かい雫が伝うのを感じた。
千(祝って…もらえたんだ……父上に………!)
泣きながら抱きついてきた千寿郎に桜と杏寿郎は目を丸くする。
そしてその混沌とした状況の中で二人は目を合わせると とても幸せそうに笑い合った。