第6章 おやすみ、またいつか ※
何故か今まで感じていた悲壮的な思いはなかった。
どこか胸の奥は温かいままであり、私はいつかは目覚めるはずだと信じながらその眠りを見守ることになる。
そうだ。私たちの思い出を聞かせてあげよう。
まずは出会いからだろうか。
それとも付き合ってからのがいい。
キッチンを片付けて、お茶を飲みながらにしようか。
リヴァイさんの好きなナッツのハチミツ漬けも用意して。
あなたがいつ目覚めてもいいように、部屋は暖かくしておこうか。
心地よく過ごせるように空気も入れ換替え、光をたくさん部屋に入れよう。
だから・・・・・・
今はゆっくり休んでね、リヴァイさん。
ぽつんと落とした言葉が闇の中に広がっていく。
すやすやと聞こえる寝息の幸せそうなリズムに寄り添うように私も一度瞳を閉じ、やがて前を向いた。
ふわりと甘い香りが漂う。
それはまるでリヴァイさんに抱き締められているような、そんな感覚になる暖かい香りだった。
2020.11.18【眠りに溺れる者】Fin.