第6章 おやすみ、またいつか ※
目を開ければそこは暗い空間しかない。
しんと静まり返った部屋の中に、今見たものが一瞬の夢だったのだと知る。
慌てて振り返ったリヴァイさんは私の腰に回した腕に力を込めており、その腕の強さに我慢したものが零れ落ちそうだった。
何が様子を見ている・・・だ。
ハンジさんが椅子で寝こけてたら意味ないじゃないか。
大口を開け、腕も足も組んだまま眠るハンジさんの顔にも疲労が見えた。
今までリヴァイさんが背負ってきたものを一手に背負うようになったのだから。
「リヴァイさん・・・・・・疲れているんですよね」
眠る間も惜しむようにデスクに向かっていたことを思い出す。
ベッドの中から「もう寝てくださいよ」と何度となく告げたことを。
分かっていたはずだ。
そして感じていたはずだ。
だが大丈夫だと前を進むリヴァイさんに何を告げればよかったのだろうか。
私は・・・あなたが安心して眠れるなら、それでいい。
幾度も髪を撫でつけ、じっと穏やかな寝顔を見下ろした。
思い悩んでいたとて変わる現状でもないだろう。
それがわかるからこそ、私はリヴァイさんの頬を両手で包み込み、そして唇を触れさせた。
「・・・・・・っ・・・・・・ん」
「・・・・・・リヴァイさん・・・」
囁く声音で声を掛け、薄く瞼が動く様を見守る。
目覚めたのだろうか。
もはや当然の流れのように懐中時計を引っ張り出した私は、彼の眠っていた時間を確認した。
そしてゆっくりと上がっていく瞼の中、黒く澄んだ瞳が私だけを捕まえるのをじっと待った。