第1章 異変
そこから朝、私が目覚めるまでリヴァイさんは目覚めなかった。
以前なら私が身じろぎすると、覚醒はしなくとも薄く目を開き、キスをくれることが多かった。
仕事中に眠ることなどほぼなかったと言えるだろう。
これがもし唐突に眠りが訪れてしまう体質となったというのなら、これ以上恐ろしいことはない。
ありがたいことに、現状私たちの生命力の危機は大きく言えばなくなったと言える。
巨人の駆逐に成功した私たちに残された仕事は、残務処理と人類のための新たな土地を探し、その土地を調べるということだ。
水は綺麗なのか、土は汚れていないか、未知の生物はいないか、人は生きていけるのか。
小編隊のチームに別れ定期的に走りだしては戻り、報告をする。
そういった一連の流れを始めて早数ヶ月が経っていた。
とうの昔に団長も兵士長という立場も返還していいはずではあったが、混乱の極みを見せる現状に私たちは調査兵団を纏め、指揮しているのが現状だ。
万が一私自身が調査へ向かっている際にリヴァイさんの突然の眠りが起こればどうなるのか。
中央での会議に顔を出している際になればどうなるのか。
いつでも自分が傍に居て、彼のサポートを出来るわけではないことも分かっている。
「・・・・・・セイラ・・・」
「ハンジさん・・・リヴァイさんは、多分何かが狂っていると思います」
「・・・・・・」
そう・・・少し前から違和感を覚えている。
その違和感は今まで曖昧で、その輪郭すらはっきりはしていなかったのだが、それでも何かが見えてきた気がした。
「・・・・・・リヴァイさんの睡眠座時間が」
「・・・・・・」
「・・・前よりも増えている。喜ばしい方向の話ではありません。寧ろ逆です。眠りにリヴァイさんの意識が・・・」
ハンジさんがじっと私を見つめている。
その瞳の穏やかな光とは裏腹に、私の中に広がる不安と言う名の暗澹とした闇は広がり続けている。
「浸食されています・・・」