第10章 仮面は外せない
別に殺しはしない、生きたく無いと思わせる位に精神的に追い込むだけだった。
しかし、今回の人はいつもの人達と違う。
「……どうしてそんなにわかりきった顔でいるのか知りたそうですね」
その女は俺たちが求めていることを言った。
「在り来りな話ですよ…私と彼は元々婚約していたんです。しかし、彼は別の女の人に浮気して、その人と本気で結婚したいほどの恋愛感情だったらしくて、私はまんまと捨てられたんです。ただ…捨てられるだけなら良かったんですよ…私たちは親が決めた契約結婚と言うやつで、彼は私が居なくならないとあの人と結婚出来ないんです。」
確かに在り来りな話だった。
邪魔になったからいち早く、存在を消して不慮の事故のように見せ、その男は好きな人と結ばれてハッピーエンドってやつだ。
なんて…馬鹿なんだろう。
「……彼はいつか私を消しに来るだろうと思っていたんです。でも其れが自分の手でしないことに腹ただしいんです。人の手を悪に染め上げる。ましてや貴方みたいな若い子にやらせなくてもまだまだ将来が見える子達に…貴方、本当はこんなことをしたくないでしょう?今ならまだ間に合うから…もうやめにしよ…?」
………その女の人の話を聞いていたヴェネットはとある言葉に悩まされる。
「したくない」…??俺はしたいとかしたくないとか考えたことは無い。
ただ、しなくては行けないと思っていた。これは姉さんと自分のために…
本当に姉さんはこんなことをしている僕を喜んでくれている…?