第7章 ❇︎生存if❇︎ がんばれ父上!
楓寿郎のただならぬ声に、昼餉の仕上げをしていた厨から大急ぎで出てみると、庭に面した縁側に杏寿郎さんが大の字に倒れているのが見えた。
「杏寿郎さん…!?
いったいどうしたのです、楓寿郎!」
「ふぇっ…ぐす…ちち、うえ…っ」
楓寿郎は、杏寿郎さんの羽織の裾を掴んだまま泣きじゃくるばかり。
「杏寿郎さん!どうなさったのです、どこか痛むのですか?
まさか、先の任務で何か血鬼術を?」
「…………」
「杏寿郎さ」
がばっっっ
「なんでもない!うむ!何もなかったぞ!!!!さて俺は鍛錬をするとしよう!!!!木刀はどこだったか!!!!!」
「なにを仰いますか!」
ドスドスドス はしっ
「では昼餉ができたら声をかけてくれ!!!」
「…それはゴボウですよ」
「む!」
ドスドスドス
「それはおたま。」
「そうか!」
ドスドス
「めん棒を振るおつもりですか?」
ダダダダダ
「あったぞ!!」
「向きが逆です…」
「よもやっ!!!」
「ははうえ…ちちうえは、目がみえなくなってしまったのですか…?」
「そうではないのよ、大丈夫。
杏火はどこ?」
「あっちにいってしまいました」
「父上のことは心配いらないから、杏火を探してきてくれる?ともかく、お昼にしましょう。」
「…はい」
ーー昼餉ーー
「うまい!うまい!!楓寿郎も杏火も、沢山食べるのだぞ!!」
「…はい、父う『うまい!!!』…」
「………」
(…なにこの空気…!?)
杏寿郎さんはいつにも増して瞳孔も声も大きいし、
楓寿郎は戸惑いを隠せないし、
杏火は杏寿郎さんのほうを見ようともせず、私にくっついて離れない。
(だから何があったっていうの!?)