第6章 任務完了!?
「杏寿郎さん」
「む、千聡?どうした」
「なんでもないですっ」
少し前を歩く杏寿郎さんの姿を、密かな決意を胸にじっと見てみる。
ピンと伸びた背中と風に揺れる鮮やかな髪。前を歩きつつも、さりげなく私に合わせてくれる歩調。
なかなか見ることのなかった私服も、品のいい柄に上質な反物を使用していることがわかる。
…うむ。今日も一分の隙もなし!
「疲れたか?」
「い、いえっ!まだまだこれからです!!」
「うむ!いい心がけだ!」
そう、私の任務(ミッション)。それは…!!!
》》》杏寿郎さんの寝顔が見たい!!《《《
なぜって…
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婚礼の日の夜。
杏寿郎さんは、あらゆることを考えに考えガチガチに緊張していた私の髪を撫で、額に一度だけ口付けて、ただずっと抱きしめてくれていた。
その温もりが嬉しくて、それでいてちょっぴりがっかりして。
いつの間にか眠ってしまって、翌朝目覚めると、杏寿郎さんは既に起き出して庭で素振りをしていた。
それからもお互いに忙しく、活動時間も違うため休む時も互いを起こさないようそれぞれの部屋…そんな日々が過ぎていった。
家のことは、千寿郎くんが手伝いに来てくれたりもした。
時々なにかを期待するような目で私を見ている時があったけど、あれはなんだったんだろう?
あ、それと、実は何度か…寝ている杏寿郎さんのお部屋の襖を開けてみたりもした。
だいたい杏寿郎さんはこちらに背を向けて寝ていて、気配に敏い方だし起こしてしまったら悪いと思って入ることは出来なかった。
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小間物屋や甘味処、反物屋から薬問屋までたくさん見てまわって
日々命をかけて恐ろしい鬼と戦っているなんて信じられないくらい穏やかな時間が過ぎていった。
さて、夕刻
杏寿郎さんが湯浴みに行っている間に、彼のお部屋で布団を二組並べて敷く。
(一緒に眠れるのなんて久しぶりだな…ちょっと、間をあけておいた方がいいかな?)
少しの緊張か遠慮か。申し訳程度に三寸ほど離してみたところで、杏寿郎さんが戻ってきた。