第1章 出逢い
リゾットside
人気の無い裏通りに座り込み、息を整える。
もう辺りはすっかり暗くなっていた。
今日の任務は、イタリアに身を潜めているアメリカ人のスパイを暗殺することだった。相手はスタンド使いで、かなり骨の折れる仕事だった。任務は遂行したが今までにない程大きな負傷をした俺は、出血はおろか意識も朦朧としていた。
この怪我で、このままアジトへ帰れるだろうか。
そう考えながら脇腹に手を当てる。
「……!」
ふと、何者かの視線を感じた。
「誰だ…いるのは分かってる。」
その人物が徐ろに物陰から出てくる。
色白で小柄な女だった。
アジア系……ジャポネーゼか?
不安げな表情の、隙だらけのその女。
少なくとも組織の人間ではない事はすぐに分かった。
一般人の観光客か何かだろう。
『怪我…してるの?』
その女は辿々しいイタリア語でそう問い、俺に近づいて来た。
猫が甘えてくるかのように甘ったるい、透明感のある声だった。
何だこの女は…。
「あっちへ行け。」
そう言って睨みつけるが、女は怯えるわけでもなく俺の側にしゃがんだ。
すると突然、自分の羽織っていたカーディガンを脱いで、俺の腹の傷口を手当てし出した。
「おい…よせ。」
手を振り払おうとすると
『動いちゃダメです。こんなに深い傷なのに…。』
見かけによらず強情な女だな…。
そう思いつつ溜息を吐いた。
まあ、この一般人に危害を加えられるわけでもない。
実際この傷ではすぐに立ち上がるのは無理そうだ。
それに……不都合なことがあればすぐに殺せる。
俺は女に身を委ねた。