第8章 あと少し
土曜日の朝。今日は午後からバイト。13時から22時まで。
午前中は黒河さんの家にお邪魔して、午後からは一緒にバイト先に行く。帰りも黒河さんと帰るので、離れるものの、丸1日一緒にいることになる。
「お、お邪魔します。」
「どうぞ~?」
「お…お仕事…ですか…?」
「ん、そう…原稿締め切り…明日なんだって。」
「…大変…ですね…。」
でもなぜかノートパソコンをリビングに持ってきて、作業をしていた。メガネをかけている姿もレアな気がする。
「…あの…書斎で…お仕事しないんですか…?」
「ん~?だって佐野ちゃんと同じ部屋にいたいから。」
「!…」
「フフッ…な~に?」
「…な…にも…//////」
照れてしまった…。
「フフッ…か~わい。あっ…!そうだ。」
「…?」
黒河さんは立ち上がり、近くにあった棚から何かを取り出し、手を握ったまま私の前に突き出してきた。
「…?」
「あげる。」
私は黒河さんの握り拳の下に手を広げて固定した。
「…!」
「ずっと渡そうと思ってて、忘れてた。俺が無くした用に作ってたものなんだけど、1個予備あるから、持ってて?」
掌に置かれたものは鍵だった。
「あ…合鍵…。」
「そう。いつでもおいで?」
「!…ありがとうございます!」(嬉しい!)
私は黒河さんの方を向き、お礼を言った。
「!…い…いいえ…どう…いたしまして…////」
なぜか黒河さんは私から顔をそらし、元いたパソコンの前に戻って行った。
「…?」(顔…赤かった…ような…?)