第8章 夏祭り
紫原の話からそういえばお参りしてないねという話になりお参りに向かう
お賽銭箱にお金を入れ、当たり障りないお願い事をしてもう一度屋台に向かうことにした
「何かしたいことあるかい」
『甘いもの食べたいけどすぐじゃなくていいよ』
「見ながら考えようか」
『あー!ベビーカステラ!歩きながら食べよ!』
「…そうしようか」
『雪さんにも買ってこ。おこづかいもらっちゃったし』
「それならオレも出すよ」
『いいよ。とっときなよ』
「せめて半分出す」
いいと言っているのに注文の際彼に負けてしまい大きいの2個頼み、征十郎は半額出してくれた
あたしの周りは押しの強い人ばかりだなと考えながら彼からベビーカステラを一袋受け取る
もう一袋はビニール袋に入れられ彼の片手にぶら下がっていた
『これも半分こしよ』
「1人で食べていいよ」
『食べきれないって』
「…ならもらおうか」
『そうして』
彼に食べろと言う意味で紙袋ごと差し出しそのまま歩きだす
既にベビーカステラを食べているのにあとはなに食べようかなと考えながら歩いていると、またも片足に違和感が生まれた
『あ』
「なにかあったかい?」
『下駄すっぽ抜けた』
「…」
彼から無言の圧力がかかる。今転んでいたらベビーカステラが宙を舞っていただろう
面白いが勿体ない。そうしているうちにまた彼に下駄を履かされ、片手を掴まれる
「迷子になられても困るしね、繋いでおこう」
『すみませんほんと』
でも片手を掴まれるとベビーカステラが食べられないんだよなと考えていると、それを見込んだのかそれも彼の片手に収まる
歩きながら彼の抱える紙袋から取って食べ、時たま彼の口にねじ込んでおいた