第3章 知らぬ世界
竈門炭治郎一行は無事、下弦の壱である魘夢から無限列車の乗客を守り抜いた。そしていま、上弦の参である猗窩座が現れ、煉獄杏寿郎が対峙している。
夜明けは着実に近づいていた。
「杏寿郎。死ぬなよ。」
「はぁ。はぁ。はぁ。」
煉獄は、左目はつぶれ、あばら骨も折れ
、内臓も傷ついている重症を負っていた。
それに比べ、対峙している猗窩座は、煉獄に切りつけられた傷が瞬く間に塞がっていく。
「生身を削る思いで戦ってもすべて無駄なんだよ。杏寿郎。お前が喰らわせた素晴らしい斬撃ももう完治してしまった。…どう足掻いても人間では鬼に勝てない。」
上弦の参の圧倒的な強さに助けに入ろうとするが、無限列車での戦いで体が限界を超えている竈門炭治郎と嘴平伊ノ助は体を動かしたくても動かせず震えていた。
「俺は責務を全うする。ここにいる者は誰も死なせない。」
煉獄は日輪刀を構える。
「炎の呼吸。奥義…。」
「素晴らしい闘気だ…。やはり、お前は鬼になれ、杏寿郎。永遠に俺と戦い続けよう。」
猗窩座は感動に震えていた。
「術式展開…。」
それぞれが奥義を繰り出さんと構え、二人の闘気がぶつかろうとしたそのとき、突如二人の間に大きな扉が現れた。
「「なっ!!」」
二人は構えを解くことはせず、その扉の様子を伺った。
「とっ扉?な…んで…。」
炭治郎もまた目の前で起きたことが信じられなかった。
ギィィ…。
それぞれ、息を潜め扉の様子を伺っていると、重い音をたて扉が開いた。すると、無数の黒い手が出てきた。
「くっ。まだ下弦の鬼が生きてるのか。」
炭治郎は回りを見渡すがそのような姿は見当たらない。
ドサッ
「「「「っ!!!?」」」」
扉から一人の少女が現れた。黒い手は少女を置き去りにして、扉へ引っ込んだ。
ギィィ…。
扉は再び閉まり、徐々に消えていった。
「「「「…。」」」」
それぞれ、いま起こったことを理解するのに時間を要し、扉から現れた少女を凝視する。
少女はピクリとも動かず、眠っている様子であったが、いま周りがとんでもない空気であることなど知らずすやすや眠っている。