第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
「義勇様、今だけは…私を見て、下さいませんか…?」
朔の言葉にはっとする。
この場に居ない者の事を考えていた冨岡にとって図星そのものだった。
「その方は、義勇様にとって…それだけ…大事な方なのですね……」
きっと、どうやっても勝ち目は無いのだろう。
ならば、今だけは。
「夜明けまで。私の……我が儘に、付き合って……頂けますか…?」
うっすらと目尻に涙を溜めながら、微笑んだ朔を俺は忘れることは無いだろう。
夜明けまで。
俺は彼女のその言葉に何故だか救われたような気持ちになって。
彼女の体を貪った。
愛し合うのとは違う、期限付きの歪んだ愛がそこにはあった。
だが、その歪みが心地よかった。
-了-