第51章 里帰り$
「左近次様は当時から勤勉でしたからね。あら、綻びが。左近次様、羽織をお貸し頂けますか?」
鱗滝が白藤に着ていた羽織を手渡すと彼女が慣れた手付きで懐から繕い物の針と糸を取り出し、せっせと作業を開始した。
あの藤姫殿が繕い物を?
「左近次様?」
「はい」
「冨岡さんも炭治郎君も貴方様のところから剣士になったと聞きました。ありがとうございます。私がこうして今、過ごせるのは今代の御館様と冨岡さんのお陰です」
今、目の前で微笑む彼女こそが、本来の姿かもしれない。
「義勇は…貴方に見合う男ですか?」
「ふふ、はい。私には勿体ないくらいです」
パチン。
繕い物を終え、白藤が糸端を鋏(はさみ)で切る。
「さぁ、出来上がりましたよ」
見事な修繕だ。
穴が空いていた様には思えない。
「藤姫殿…」
ガタ。
「終わりました」
「冨岡さん、お疲れ様です」
「あぁ。先に風呂に薪をくべてくる」
「頼んだ」
「はい」
冨岡が外へ向かう。