第6章 藤に詩へば$(無惨裏)
想い人など忘れてしまえ。
お前はただ私がなすがまま、快楽に飲まれてしまえばいい。
今この一瞬だけは其方は私のものだ。
狂おしくて、愛おしい。
「あぁーーっ!!///」
思いを口にできたなら、どんなにか幸福だっただろうか。
十二の頃から仕えてくれていた白藤。
貴族の姫ではないからと下げ渡された遠い親類の娘。
私の二つ年下のこの娘はとにかくころころ表情の変わる子で見ていて飽きなかった。
仕えている年数が経ってきて、やがて年頃になった白藤に、一度だけ縁談が持ち上がったが、主人の権限で破談にした。
私は一度手にしたものは手放したくなかった。
たとえそれが人でも物でも。
美しく成長した彼女は私の元から離れず、私にかしずき、世話を焼いた。
いつしか、その名の通り藤の花のように美しくなった彼女に目を奪われるようになったのはいつからだったか。