第75章 折れない心
彼女が傍にいる事が当たり前だと思っていた。
待っていると言ってくれた。
大丈夫だと、送り出してくれた。
白藤……
確かに、彼女は鬼だ。
初見で閨を共にし、その後に遊郭での共同任務。
藤の花の屋敷でしか会えないのが待ちきれず、そわそわしていたこともある。
不死川のように、直接呼びつけることは出来なかった。
次第に変化していく自分の気持ちと彼女の反応に鼓動が高鳴った。
双方の想いが同じだと気づいた時の、あの満たされた日を忘れられない。
幾度も肌を重ね、唇を合わせ、長い夜が空けるのを待ったことさえ愛おしいと……
どれもが、彼女にしか抱かなかった感情だ。
恋しい。嬉しい。楽しい。
同時に、一人の夜が酷く怖くなった。
悲しい。寂しい。会いたい。