第34章 第34話 空白@
歌仙「何を、言っているんだい?」
彼女から口付けられて、その舌に馴染みのある錠剤が乗せられていることに気付く。
ごくり。
歌仙「君、正気かい?」
千歳「ちょーぎに言われたんだ。飲ませる相手は自分で選べって。これまでの私なら迷うことなく太郎太刀を選んでいただろうが、私はお前が良いんだ。歌仙…」
お前が良いんだ、国広。
脳内で反芻される言の葉は、この場にはいない者へ向けられたもので。
もう、お前の元へ戻れないなら、せめて私自身を見てくれる男と共にありたい。
そう、思った。
だが、媚薬を飲んだハズの歌仙は私を抱き締めると、こう言った。
歌仙「前にも言ったけど、君は自分を大切にするべきだよ。確かに君は魅力的だ。僕だって許されるものなら君を自分のものにしたい。でも、君には、君の心の中にいるのは僕じゃない」
千歳「歌仙」
歌仙「本当に僕でいいのかい?」
千歳「歌仙、歌仙…ごめん」
歌仙「うん、分かっているよ。大丈夫だよ。僕こそごめん。今日で最後にするから君を抱かせて欲しい」
千歳「うん、抱いて…」
彼女はこの細い身体にどれだけのものを背負っているんだろう。