第27章 第27話 逃避行(とうひこう)@
千歳「見つけてくれて、ありがとう」
そうか。
彼女は見つけて欲しかったのだ。
他の誰でもなく、山姥切国広に。
だから、俺に拘る。
まんば「今までどこにいたんだ?」
少しだけ、彼女の本丸が見つかるまでの間だけ、このままでいたいと思うのは俺の我が儘だ。
未だに記憶が混濁する彼女の背を撫でて見つかって良かったと呟く。
嬉しそうに彼女が笑う。
まるで幸せな夢を見るように。
不思議だ。
彼女が笑ってくれると胸の辺りが熱くなる。
じんわりと心地好いその熱に俺はいつしか時間を忘れた。
自ら彼女の頬に口付ける。
ああ、このまま彼女を帰したくない。
俺の足は本丸探しから繁華街へと移る。
彼女と手を繋いで歩く。
それだけで嬉しかった。
こんな感情を俺は知らない。
梓といた時でさえ、こんな満たされたような気持ちにはなれなかった。
だんだんと二人の口数も少なくなって……