第26章 第26話 澱(おり)@
山姥切「翡翠?」
翡翠「とおさまー」
泣きながら走り寄ってくる翡翠を抱き締めて、山姥切は眉根を寄せる。
この年では一人で帰って来ることは困難だ。
瑠璃の時といい、誰かが連れてきたのだろう。
山姥切「誰と来た?」
翡翠「確か、太郎太刀って言ってた」
山姥切「太郎太刀?」
長義が言っていた。
二年前、千歳は拐われる前に出会い茶屋で太郎太刀と主犯格だった山姥切長義に弄ばれたと。
刀解処分にはならなかったのか。
いや、それ以前にあの場に太郎太刀の姿はなかった。
あの場にいなかった為に刀解処分にならなかった者がいる。
手負いの山姥切長義を除いて。
なら、一期一振は?
奴とは大阪城の時に会ったのが最初のハズだが、もっと以前から千歳の事を知っていたら?
二年前、俺達が着くより早くあの場所を訪れたことがあったなら?
全て憶測だ。
だが、そうであれば辻褄が合う気がした。
思い出せ。
二年前のあの日のことを。