第11章 歪み【月島蛍】
「ごめん、穂波さん。さっきの続きはできないかも。
今からたっぷりと丁寧に、抱き潰すから、今日はそれで勘弁して?」
額を合わせて、そう問うてみれば
『たっぷりと丁寧に、抱き潰されるの……?』
僕の首に腕を絡めて、甘い声で繰り返す。
「そう。満足させるから」
『…ん、もう満足しちゃいそうなくらい、グッときちゃった』
「…っ そうみたい、だね」
実際にキュッと軽く僕を締め付けてくる。
この人感度が高すぎて、ゆっくり抱くことがすごいハードル高いかもって今更思えてくる。
『…いっぱい気持ちよくしてね?』
「それは大丈夫。キミ…」
『いっぱい気持ちよくなってね?』
「…それは、ちょっと危ういかも。気持ちよすぎて保たなそう」
三回目なのに、まだ動いてもないのに、
すぐにイってしまいそうな気しかしない。
慎重に慎重に、嬲るようにジリジリと高みへ誘おう。
口付けながら、ゆっくりと奥深くへ腰を沈め、奥を擦るように腰を動かす。
穂波さんの息が、汗が、体温が、爪が…
何もかもが僕と溶けていくみたいだ。
生じた歪みも、あどけなささすら感じさせる不思議な色気も、
全部インプットして。
僕と穂波さんの間にだけ残る、
目には見えない痕をたっぷりと時間をかけて残していけばいい。
ーfin