第7章 007
凡そ30畳はあるだろうか、広い部屋のほぼ真ん中、リビング部分に場所を移し、二人は所在なさげに俯いたまま立ち尽くしていた。
見下ろした先には、見るからに高価なソファーに座り、優雅に組んだ足を投げ出した鮫島と、イヤホンを耳に突っ込んだまま、依頼人から送られて来たカードキーを手に、眼鏡の奥で視線を鋭くする榎本が座っている。
そう…、それはつい数分前のこと…
いざ脱出!とばかりに部屋を出ようとした翔太郎と健太の二人は、榎本に呼び止められ、部屋の中へと引き戻されてしまったのだ。
榎本は、翔太郎が咄嗟に胸ポケットに突っ込んだカードキーを、見事な早業で抜き取ると、それを鮫島の前に差し出した。
鮫島はカードキーを見た瞬間、「これはどういうことだ」と言ったきり、首を傾げる以上のことはせず…
四人の間には、重量感たっぷりの気まずい空気が流れていた。
普段はお調子者の翔太郎でさえ、口を開くのを躊躇っていた。
そんな、なんとも言えない状況を一瞬で変えたのは、他でもない、居眠り中の大野の胸ポケットで鳴り響くスマホの着信音だった。
それには流石の大野も驚いたのか飛び起き、半分寝ぼけ眼のまま胸ポケットからスマホを取り出し、通話ボタンも押さないままスマホを耳に宛てた。